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仕事

「なまくらな仕事しやがって」

陸に上がって家でテレビを見ているとき

いつもは黙っている父親が、声を荒らげるときがあった。

驚いてテレビを見やると、企業が人災ともいえる事故を起こしたニュースが流れている。


父は船乗りで機関長だった。

小さな独航船の機関長なので

船のエンジンを動かすのは、父だけ。

彼のエンジニアとしての技量に、乗組員の命と生活がかかっていた。


一年近くの海での暮らしから陸に戻ってくると

しばらくは船の仲間たちと宴会が続く。

寡黙な父の存在感は、ほかの船乗りとはどこか違っていた。


「実際に海の上で船を動かしているのは、機関長だからよ」、母が言う。

「船長さんは一番偉いんでしょ?」

「組織のなかではね」

「ホントは違うの?」

「現場では、機関長とボースンが大事なのよ」


一度港を出ると、数ヶ月も帰らない。

毎日毎日、機関の音を聞いて暮らす。

調子がよいときもあれば、悪いときもある。

もしも船のエンジンが止まったら

操業はそこでストップ、会社の損失は計り知れない。

「だから、腕のいい機関長は、大事にされるんだよ」


子どもの頃、スプーン曲げにはまっていた私に

父親はまったくの無関心だった。

「お父さん、超能力って信じないの?」

そうたずねる私に、父は

「今、目の前で止まってしまったエンジンを動かすことができるのなら、信じてもいいかな」 と、

そんなんできんだろう、と言わんばかりに笑ったものだ。

かなり子供心には不満だったけど。


神様に祈っても、ほかのどんなものにすがっても

止まってしまったエンジンを動かすことはできない。

それをどうにかできるのは、自分だけだ。

父のエンジニアとしての誇りと、幾度もの修羅場を乗り越えてきた

プロとしての自信を感じる瞬間でもあった。


そういう父は、いい加減な仕事をすることが一番嫌いなんだ。

「プロとして、やるべきことをやってない」

最近はそういうの、増えてきたね。

今夜も、ニュースで似たような事件、事故が放送されたら

きっと、テレビの前で怒っているんだろうな。






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