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赤い糸が見える男




テレビ観てたら、相手に現れるオーラの色で
その人の内面がわかる、って女性が出てた。
彼女には、そのオーラが見えるらしい。

隣に彼氏がいて
「彼女の事が好きだ」と言う。
「愛情のしるしのピンクのオーラが出てる」と
彼女は喜ぶのだ。

これ、キツイよなぁ・・・
好きだという人が心変わりして
だんだん彼女から離れていく時
オーラの色も変わっていくんだろうね?
恋人だけではなく、友だちとか信頼してた人とか
周りの人たちの本当の気持ちが見えるんだとしたら・・・・・

オーラが見えることが嘘かホントかと考える前に
そんなこと、思ってた。
で、若い頃につくった脚本をひとつ思い出した。
なんとなく、似ているような気がしたので・・・
赤い糸が見える男


薄暗い店内。
その日約束をすっぽかされて女はひとりで飲んでいる。
カウンターには、もうひとり男が貼り付いて飲み続けている。
煙草に火を点けようとして、ライターを忘れたのに気がつく女。
目と目が合って、男がゆっくりと自分のライターで女の煙草に火を点ける。

女 「ありがとう」
男 「いえいえ」
女 「ライター、どこかに置き忘れてきたみたい」
男 「彼氏と、喧嘩でも?」
女 「・・・まあ、そんなところかな」
男 「でしょうね。随分と細くなってますよ」
女 「え?」 (自分の身体のあちこちを見回す)
男 「(微笑みながら) ここですよ」

男が指差したのは、女の小指。

男 「ここにね、糸がついているんです。」
女 「・・・・・・・」
男 「赤い糸ですよ」
女 「細くなってるっていうの?」
男 「今はね。でも、糸の太さや強さは変わりますから」
女 「おかしなこと言うのね。赤い糸が、あなたには見えるってわけ?」
男 「ええ。見えるんです」
女 「どんな風に見えるの?」

酔っ払ってはいないようだけど、不思議な話をする男。
さっきまでのふさいだ気持ちが、少し軽くなったような気がする。
女は男の話に身を乗り出した。

男 「本当に、糸がついているんです。赤い糸が小指にね。
   で、糸の先は、恋愛中の人に繋がっているわけです。」
女 「え、運命の人にじゃないの?」
男 「運命の人っていうのは、今そのときに恋愛している人のことなんです。
   これから出会う予定の人にも、もちろん繋がってはいますけれどね。」
女 「それじゃ、糸は一本だけじゃなくて、いっぱい付いているって事?」
男 「そうですよ。僕には、そういう風に見えます。」
女 「じゃあね、私の小指には今、何本ついているの?」
男 「一本ですよ」
 
しばらく、ふたり見つめあう。

女 「そ、そうか・・・じゃ、この一本が無くなったら、もう私に出会いはないってことね?」
男 「そうかもしれないです」
女 「そうかもしれないって・・・本当はどうなのよ」
男 「すみません。僕は、占い師じゃないんです。ただ、赤い糸が見えるだけなので
   なんとも答えようがないんです。
   赤い糸って、面白いんですよ。心のつながりが強ければ強いほど
   太く強く結ばれていく。逆に、心が離れていくと、細くなってしまう。」

男が女に耳打ちする。

男 「ほら、あそこのふたりを見てください」
女 「?」
男 「あそこは、たぶん別れ話をしています」
女 「うそ!」
男 「ホント。今にも糸が切れそうです。」

男が指差す男女は、何事もないように
落ち着いて言葉を交わしている。
普通のデートのように見える。

男 「ああ、切れそうだ」

向かい合って座っていた男女は違う方向を見ながら、立ち上がる。
男が勘定書きを手にして、女に見せる。
うなずく女。そして、カバンの中から財布と小さな箱を取り出す。
勘定の半分の金額のお金と一緒に、その箱を、男に渡した。

男 「おしまいです。糸が今、切れました」

男が支払いしている間に、ひとりでドアから出て行ってしまう女。
箱の蓋を開ける男。指輪が入っている。

女 「別れ話だったんだ・・・」
男 「そうなんです。こういう感じで、糸が見えているのです」
女 「私の糸は、まだ繋がってる?」
男 「ええ。もちろん、細くはなってますが、繋がってますよ」
女 「よかった・・・・」
男 「不思議なものですよ。アツアツでベタベタに見えるのに、糸はか細くて
   いつ切れてもおかしくない恋人同士だとか、お互い愛想なくて言葉もなくて
   一緒にいるのがつまらないように見えるふたりが、実は強く結ばれていたり
   わからないものです。」
女 「なんだか、面白そうね」
男 「そうですか?そうでもないですよ」
女 「自分の糸は見えないの?」
男 「見えますよ。周りの人たちの赤い糸が見えるようになってすぐに
   自分の指にも糸がついていることに気がつきました。
   それで、糸をたどってその先に誰がつながっているか、探したんです。」
女 「会えたの?糸が繋がっている人に」
男 「ええ。会えました。」
女 「そして、好きになった・・?」
男 「(うなずく)もちろん、好きになりました。嬉しかったですよ。
   会うたびに、糸が太くなっていくのが、目に見えましたからね。
   幸せでした。でも、あるとき彼女の指に細い糸が増えていることに気がつきました。
   僕たちを結び付けている糸の太さとは比べられないほどの細い糸でしたが
   気になってしまって・・・・。
   糸は見えているのに、彼女の気持ちを確かめたいという想いが強くなって
   あれこれ、しつこく質問したりして、彼女を不機嫌にさせてしまいました。」
女 「嫉妬?ヤキモチやいたのね」
男 「私のこと、そんなに縛り付けたいの?・・・って、言われましたよ。
   見えない糸で彼女を縛っていたのかもしれないですね。
   そんなことを繰り返すうちに、僕との糸はだんだん細くなってしまって
   代わりに、もう一本の細かった糸が、太くなりだしたんです。
   焦りました。
   なんとか、また僕たちの糸を太くしようとして頑張ってみました。
   だけど、ダメだったんです。
   彼女は僕に対して、変わりなかったのに、僕はひとりで空回りしていました。
   糸が細くなっているだなんて、彼女にはわからない。
   やがて、糸はますます細くなって、今にも切れそうになってきました。」

男、グラスに入った酒を飲む。

男 「その日は朝からなんだか嫌な予感がしていたんです。
   彼女から電話があって、今から会いたいって言うんです。
   糸は、もう本当に切れそうなくらい細くなっていて、僕はなるべくそれを
   見ないようにしながら、彼女に会いに行きました。
   彼女に会って話しをしている間も、泣きそうでしたよ、僕は。
   いろいろなことを、彼女は言いました。僕は彼女を見ることができないで
   うつむいて指の糸ばかりを見つめていました。
   彼女が、僕の名前を呼びました。顔を上げると、彼女は僕の目を真っ直ぐに見つめて
   さようなら、と小さく言ったんです。
   そのとき
   赤い糸は音もなく切れ、粉のような光の粒に一瞬姿を変えて
   消えてしまいました。」

黙ったままの女に気がつく男。

男 「と、まあ、こんな風に見えるので、あまり面白いわけでもないんですよ」
女 「そうか・・・そうですよね・・・。糸が見えているって、、、良いことなのかしら。」
男 「どうでしょうね。すべて見えることが良いことかといったら
   そうじゃないといいうこともあるし・・。
   ただ、僕は見えている分、その繋がりを大事にしていきますよ。
   切れてしまうことを止める事はできないけれど
   切れないように努めたい、とは思っています。」
女 「そうね。私も、大事にしなくちゃね」
男 「そうですよ。悲しい思いはしないことにこしたことはないですからね」
女 「ありがとう。さっきまで、彼とうまくいかなくて落ち込んでたんだけど
   なんだか気持ちが明るくなったわ」
男 「こちらこそ、御礼を言いたいですよ」
女 「あら、どうして?」
男 「こんな話しを素直に聞いてくれたのは、あなたが初めてですから」

男は笑顔でグラスを上げる。
微笑んでグラスを持ち上げ、乾杯する女。
男が辺りを見渡す。次第に明るくなる店内。
客たちの指に赤い糸がついているのが見えてくる。
そして、カウンターの男と女の間にも
赤い糸が結びついている。


12:00 | いろいろと | comments (24) | trackbacks (0) | page top↑
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コメント

# No title
赤い糸もピンクのオーラも
相手のを見てみたいって気持ちはあるけれど
本当に見えたら怖いかも?
赤い糸の男性のように自分との糸が太くても
細い糸が気になって、気になって・・・
必要以上に聞いちゃうかも知れない。。。^^;

やっぱり今のまま相手を信じていこう っと!!!^^

by: 理彩也 | 2005/04/20 12:53 | URL [編集] | page top↑
# No title
見えてしまったら・・・
恐いような嬉しいようなでもやっぱり・・・
by: orchidvillage | 2005/04/20 13:08 | URL [編集] | page top↑
# No title
私もやっぱり、見えたら怖いかなぁ・・・って思います。
プラスの感情だけでなくマイナスの感情も見えてしまうわけですもんね。
見えてしまう人は、マイナスのオーラを見ても心の平静を保つように訓練するのでしょうか・・・・でないと生きていくのに辛いです。

脚本、面白いですねぇー。
赤い糸はドラマだったらCGで作るのかなぁ?舞台じゃ無理???
by: sprewell8_daisuki | 2005/04/20 13:47 | URL [編集] | page top↑
# No title
それも幻想だったりするのでは。
by: panchan1121 | 2005/04/20 18:30 | URL [編集] | page top↑
# No title
読み入ってしまいました。sofiaさんが作家になったら本買っちゃうな~。
by: hotchai | 2005/04/20 19:56 | URL [編集] | page top↑
# No title
う~ん。。。これってキツイですよね。
なんか運命占いみたいですね。
私、赤い糸いらないです。
(こんなこと言ってるからいきそびれたんだねww)
by: hannah5 | 2005/04/20 23:25 | URL [編集] | page top↑
# No title
目で見えるのは確かにきついけど、実際にはじわじわ感じてしまうわけで
即効性があるかないかの違いなのかな。つまり、終わりに近づいている場合はどっちもつらい。けれど、結びつきが強くなっている場合は目でみてわかるからてれちゃうけど嬉しいね。
by: t2mina | 2005/04/20 23:46 | URL [編集] | page top↑
# No title
りさちゃん、見えたらいいな、ってときもありますね・・・
見えていても相手を信じていられるほどの結びつきであったら
見えてても見えて無くても関係ないかな、とも思います^^
そういう関係になれる人って、なかなかいないですけれどね・・・
by: sofia_ss | 2005/04/21 07:49 | URL [編集] | page top↑
# No title
orchidvillageさんのお仕事でしたら、糸やオーラが見えているほうが仕事がしやすいかもしれないですね。
人との繋がりって難しいです。
by: sofia_ss | 2005/04/21 07:52 | URL [編集] | page top↑
# No title
スプリーさん、そうですね、辛そうです。
人の心に関しては、オーラが見えない私でも、気がついたりすることはありますけれど、わかっていても知らんふりしたり・・・・
すべてを明らかにしてすべてに反応するって、生きていく上ではかなり大変なことなのかもしれないですね。
脚本は、演劇部だったので、学生時代よくつくっていましたよ~
これはもともとは男の一人芝居の話しでしたが、今回男女の登場人物にして、オチをつけてみました。
舞台全体を暗くしてピンスポットの芝居すれば、ラストの赤い糸を見せることができます^^
by: sofia_ss | 2005/04/21 07:59 | URL [編集] | page top↑
# No title
パンチャンさん、それに一喜一憂して踊らされないようになっていくのですね、大人って^^
by: sofia_ss | 2005/04/21 08:05 | URL [編集] | page top↑
# No title
チャイさん、ありがとう^^
サイン会開いたらきてくださいね~~♪
by: sofia_ss | 2005/04/21 08:06 | URL [編集] | page top↑
# No title
はんなさん、何をおっしゃいますやら・・・。
まだまだこれからですよ!
by: sofia_ss | 2005/04/21 08:07 | URL [編集] | page top↑
# No title
ミナさん、happyなときはさらに目に見えてシアワセですねぇ。
そこで能力が消えて、見えなくなってしまうのが、一番良いことなのかもしれませんな^^
by: sofia_ss | 2005/04/21 08:09 | URL [編集] | page top↑
# No title
筒井康隆の「家族八景」「七瀬ふたたび」「オイディプスの恋人」の3部作
をご存知ですか?赤い糸ではないですが、こんな雰囲気の小説でここから下の娘の名前を頂戴しました。
はげましありがとう。^^
by: wataya.shinbe | 2005/04/21 10:54 | URL [編集] | page top↑
# No title
シンベエさん、糸が見えなくても、人は繋がっておりますね。
シンベエさん自身のお身体にも、気をつけてください。
by: sofia_ss | 2005/04/21 17:03 | URL [編集] | page top↑
# No title
糸にたぐりよせられるように、ついつい話にはまりこんでしまいました。
うまい!
「世にキモ」のお話にして欲しい。^^
by: konomi0206 | 2005/04/21 22:52 | URL [編集] | page top↑
# No title
こりゃ、役者の演技力にかかったお話ですな。
舞台よりも、映像の方が見せ易そうですが・・・。
人を引き込むことのできる話ですね。ちょっとやりたいと思っちゃいました(^^
私の赤い糸は・・・、途中で腐ってるみたいです(--;
by: nobu-si | 2005/04/22 03:49 | URL [編集] | page top↑
# No title
仕事上のオーラは大歓迎です。(爆笑)
そしたら騙される事も無く心配は現象ですが。
by: orchidvillage | 2005/04/22 13:21 | URL [編集] | page top↑
# No title
コノミさん、>糸にたぐりよせられるように、←うまい!^^
by: sofia_ss | 2005/04/22 18:46 | URL [編集] | page top↑
# No title
ノブさん、セリフだけで赤い糸を想像させるようなうまい役者でないといけませぬ。ノブさんの糸は、いっぱいついててわかんないんでしょ^^
by: sofia_ss | 2005/04/22 18:48 | URL [編集] | page top↑
# No title
orchidvillageさん、ですよね^^
見えたらいいですね。見られてたらイヤだけど・・・
by: sofia_ss | 2005/04/22 18:50 | URL [編集] | page top↑
# No title
ええw
あめは赤い糸が見えます!
いつもお腹にしてる奴です!^^

あ!赤い腹巻だった(汗)^^;
by: あめ☆ | 2005/04/23 12:21 | URL [編集] | page top↑
# No title
あめさん、もう、春ですよ~~
そろそろ腹巻はしまいましょう^^
赤い紐が印象的な予告編でしたね、そういえば。
by: sofia_ss | 2005/04/23 22:11 | URL [編集] | page top↑

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